光明幼稚園のブログ

港北区高田西にある光明幼稚園の風景

園長のよもやま話:PA

PAという言葉を聞いたことはありませんか?

パーキングエリアじゃないですよ。

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日吉駅で東急アベニュー主催のライブのPAをしたときのもの。場所が無くて、やむなくステージの脇で。出演はSoul food cafeさん


 PAとはパブリック アドレスの略で、日本語にすると公衆伝達という意味になるそうです。なんだかさらに分かりづらいので、簡単に言うと拡声、つまり「声を大きくして伝える」ということ、マイクで拾った音を大きな音としてスピーカーから出すことをPAといいます。コンサートやライブの場合は、SR(サウンド リインフォース:音響補強)というのが正しいらしいのですが、一般にプロの現場でもPAと言っているそうです。ですからPA担当の人のことをPAエンジニアとか、PAマンとか、単にPA、日本語で音響さんとも呼んだりします。

 では、コンサートやライブでPAエンジニアが何をしているかというと、ステージ上で演奏している人たちの音を集めて、それを調整しながら大きな音としてスピーカーから出してお客さんに聴かせるということをしています。

 

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ドラマー目線でみた当園ホール。会場設営の途中なので、まだ椅子を並べていない状態


 例えば、ドラム、エレキベース、エレキギター、ボーカルという4人編成のバンドがあったとします。ドラムの音は大きいので、それに負けないようにボーカルもエレキベースもエレキギターも、アンプを通して音を大きくしないとお客さんに音を届けることはできません。ステージ上のそれぞれの楽器の音量の調節を行うことが、まず役割の一つです。

 また、ボーカルなどにはリバーブなどのエフェクト(効果)をかけて雰囲気を作ります。カラオケでエコーをかけるのと同じですね。

 また、音量の調節だけでは音が混ざり合ってうまく聞こえなくなってしまう場合があります。例えば、ギターとピアノなどは、音の高さが似ていて、両方が一緒に弾いているとごちゃごちゃして、どっちの音だか分からなくなるような感じに聞こえてしまう場合があります。そのような場合に、それぞれ音質の調整をして邪魔しあわない音質に調整することで、どちらの音もきれいに聞こえるようにすることも役割の一つ。この時、ひとつひとつの楽器の音を取り出して聴くと全然良い音には聴こえないのですが、色々な音に合わせると、それぞれの音の中でも、きちんと別の楽器の音として抜けて聴こえるようになります。それぞれに良い音を作るのでは無く、全体のバランスを聴きながら、邪魔し合ってしまう音域、モタついている音域はガッツリ削る。これが解るようになるまで何年もかかりました……。

 人間関係でも同じですよね。全て自分を出しちゃうと喧嘩になったりします。それぞれがそれぞれを助け補い合いながら、相手が個性を発揮するのをサポートをしながら、時には自分もサポートを受けながら個性を発揮出来る関係性を築きながら、ひとつの問題と取り組めば、、きっと良い結果が生まれますね。PAエンジニアはそれを音で作っていくのです。

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モニタースピーカー 床に斜めに置くことが多いのですが、スペースもとるし音量も大きくなるため、多数設置するとステージ上の音が爆音になり、どんなに音量あげても自分の音が確認出来なくなります。そこで小型のモニターを耳に近い場所に設置する形にしました。それぞれにきちんと音が聞こえると好評でした。横浜のライブハウスでもこの方法を試したところ、出演者からも、ハウスのPAの方からも好評でした。

 

さらに、演奏する人が演奏しやすいように、演奏する人のモニターへ音を返すこともPAエンジニアが行います。演奏者は自分の音が聞こえないと演奏できません。また、周りで基準になる音がきちんと聞こえないと、自分だけずれた演奏になってしまいます。ステージ上では生の音の大きいドラムに加えて、ギターやベースなどのアンプが大音量で鳴っており、ボーカルが声を張り上げても自分がどんな声を出しているのかわからなくなってしまうこともあります。ですから、それぞれの演奏者が演奏しやすいように、演奏者が求める音を演奏者の前にあるモニタースピーカーに返すのも重要な役割の一つです、これらすべてのことを考えつつ、さらに会場の広さや、会場のもつ音の特性、お客さんの人数、音楽の方向性なども考慮したうえで、スピーカーから出す音の調整をしていきます。ギターアンプやベースアンプなど以外の会場内のスピーカーのほとんどからは、PAエンジニアが調整した音が出ているということになります。

 

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日吉駅でのライブの時の機材の山。2か所で複数のアーティストの方のライブを行ったため、様々な事態に対応できるように大量の機材を持ち込みましたが、結局使ったのは半分だけ・・・。

 

PAエンジニアは、コンサートやライブにおける縁の下の力持ち!ステージの上でスポットライトを浴びるアーティストに比べて、表に出ることもなく、その存在を語られることもなく、まことに地味な存在ですが、なくてはならない役割の一つであり、ミュージシャンとともに音楽を作るメンバーの一人でもあることを、ぜひ覚えていただきたいと思います。コンサートやライブでは、ミュージシャンやPAエンジニアのほかにも、照明さんやホールのスタッフさんなど、たくさんの方たちがかかわってコンサートが成立します。そんな縁の下の力持ちの方々にも目を向けていただけたら、コンサートがより素晴らしい時間になるのではないかと思います。