光明幼稚園のブログ

港北区高田西にある光明幼稚園の風景

光明幼稚園の音のこだわり(ホールの音響設備)

 令和元年6月、私(園長)の夢であった、幼稚園ホールにアーティストを招いてのライブコンサートが実現しました。当園の卒園であり、私の小学校時代の同級生でもあり、今も音楽活動を行っている友人と、40年ぶりに再会したことで実現したライブコンサートでした。たいへん多くの方にご来場いただき感謝しています。このブログをご覧いただいてくださっている方の中にも、あのときにご来場くださった方がいらっしゃるのではないかと思います。あの時の最後に「さくら」のピアノを弾いた闘病中だった友人は、残念なことに昨年お空の世界へと一足先に行ってしまいました。あの時にステージに出られたこと、そして皆様から本当に暖かいご声援をいただけたことは、彼女にとって本当に幸せな瞬間となったのではないかと思います。その節は素晴らしい時間を共有していただき本当にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。ご冥福をお祈りいたします・・・。 合 掌

f:id:koumyougenki:20210511193944j:plain

 

 その時のコンサート会場で、ある保護者の方から「なぜこんなに音が良いのか?」と声をかけられました。聞くとライブハウスのステージに立たれた経験がおありとのことで、「幼稚園のホールなのにライブハウスに負けてない音でびっくりした!」とのことでした。また「子どもたち三人ここに通ったけれど、こんなに良い設備だったなんて知らなかった。何で言わないの!」とおっしゃる方も・・・。またしかられないように、せっかくなので当園ホールの設備について少しご紹介させていただこうと思います。

 

f:id:koumyougenki:20210511194508j:plain

保護者の方からご寄付いただいたこいのぼりが泳ぐホール


 私は今の園舎を設計する段階から、保育室を連結して作る保育室兼用のホールではなく、ホールがホールとして別にあり、雨の日でも子どもたちが走り回れるスペースを作れるようにしたいと思っていました。以前の園舎は木造の素敵な園舎でしたが、ホールを使うときには教室の壁やロッカーをはずして、教室を3つつなげて使用するホールでした。ですから、行事があるたびに壁を取り外し・・・。取り外すときには職員総出で壁のパネルを持ち上げて足で蹴っ飛ばすという特殊技能が要求される難作業?でした。ですから、いつでも使いたいときにホールが使えたらいいなとずっと思っていたのです。

 そしてもしそんなホールを作ることが出来たら、いつかそこでミュージシャンを招いてライブコンサートを開きたいとも思っていました。もちろん専門の音楽ホールにするには莫大な予算が必要になりますから、専門的な音楽ホールとしての設計はもちろん無理です。しかし、なるべく費用はかけずに子どもたちのためのホールとしてのスペースを確保しつつ、音響効果も最大限考慮し、さらに夢がかなってミュージシャンを迎えることが出来たときにも、ミュージシャンが音響機材の持ち込みをしなくてもよいだけの機材とクオリティを自ら備えることを目標に考えていました。残念ながら園舎の設計を依頼した設計士には幼稚園設計の経験は多数あったものの、音楽ホールやスタジオ設計のノウハウはありませんでしたので、直接設計士に、天井は吸音効果が見込める有孔ボードを全面に使いたいと提案しても、見た目がカッコ悪いからダメだと却下されたり、設備の設計士が組んできた音響プラン(100万円もする見積価格でこれなの?)に私が納得できず、すべてキャンセルして個人機材を使用することを前提に設計変更したりと、決して多くはありませんが、私の知識と経験の中から出来る限りの想いをぶつけて、単なる素人と聴く耳を持たない設計士と闘いながら?作っていったのです。今ならもう少し負けないだけの信念があるんですけどね。

 園内共通の意匠として使っているスプルースという木材(年長組の園舎はヒノキです)は、ピアノやギターといった楽器やスピーカーなどの材料としても使われる響きの良い素材ですから、これらもホールの良い響きに手を貸してくれているように思います。もし、ホールの音を気に入っていただけたとしたら、私たちの想いと試行錯誤の結果であると、嬉しく思います。

 

f:id:koumyougenki:20210511194824j:plain

令和元年12月のクリスマスライブのセッティング 単管を組んだせり出し舞台は自作 舞台奥の黒いカーテンが吸音カーテン

 当初ホールのスピーカーは、私が所有していたYAMAHAのS4115Hを使っていました。S4115Hは当時小さなライブハウスなどでも使用されていた定番スピーカーでした。学生時代にコツコツ貯めたお金で購入したもので、ずっと良い音をしてくれていたのですが、30年ほど使用してきてなんとなくすっきりしない音になってきたと感じてしまい、昨年思い切ってJBLのSRX835Pに変更いたしました。可聴帯域をほぼカバーする33Hz~21kHzという特性と、2000Wという高出力を誇るアンプを内蔵したスピーカーです。学生時代からの憧れであったJBL。私にとっては、間違いなく超弩級のウルトラスーパースピーカーです。このスピーカーを得たことで、ホールでの行事の時の音に迫力が出たばかりでなくアナウンスの声も明瞭になりました。スピーカーの変更を喜んでいたのは、私と事務長だけでしたが。

 

 また、舞台側と園庭側のカーテンは、今までのベージュの遮光カーテンに加え、吸音素材の黒いカーテンを加えました。この吸音カーテンのおかげで、ホール内の雑味のある余計な響き(800Hz付近に変な響きがありました)が少なくなり、すっきりとした音になりました。これによって、マイクのハウリング(ピーという大きな音)への余裕が増え、生活発表会のオペレッタのミキシングも楽になり、子どもたちのセリフがしっかり聞こえるなどの効果がありました。

 

f:id:koumyougenki:20210506172834j:plain

2階倉庫のホール用音響機材です。ミキサーはMACKIE onix24.4

 

 舞台上手には一通りの操作が出来るだけの音響機材(小型ミキサーやCDプレイヤー、ワイヤレスマイクのレシーバーなど)をセットし、照明の操作を含め、通常の操作はここでできるようにしています。また、生活発表会の時は、舞台下手の上部、二階の倉庫で操作ができるようにしています。発表会のオペレッタなどで、微妙な調整ができるように、24chの中型のミキサーやグラフィックイコライザーなど、各マイクで拾った音を確認できるようにしたモニタースピーカーも設置してあります。照明の操作もここで出来るように接続を変更して使います。ただ、ホールの音を直に聞くことが出来ないので、時折外に出て会場内の音を確認に行きます。ただ、席を離れた隙にハウリングを起こすことが多く。まるで私の行動を読まれているようで困ります・・・。

 ホールでライブコンサートを行うときには、ホールの最後部にPAブースを設けて操作します。実際にホール内の音を聞きながら音を作っていけるので、PAの操作はここが一番やりやすい場所です。使用する機材は、ライブコンサートの規模(出演者の数・音源やマイクの数・モニタースピーカーの必要数など)によって使い分けています。10人くらいの編成の演奏者に対し、それぞれの演奏者の要望に応えるようミックスした音を各演奏者へのモニター返しするのまではなんとかやりました・・・。

f:id:koumyougenki:20210521110907j:plain

編集用PCとミキサー PCにはプロツールスLEが入っています。ミキサーはサウンドクラフトS6000 ディスプレイには、幼稚園協会から頼まれて作成した音源のデータが。(YouTubeで「ヨコハマ・バーン みんなで踊ろう」と検索するとこの音源を使った動画がみられます。よろしければ・・・。)

 

 今までこだわりを持ってきた部分ではあるのですが、特に宣伝することでもないので、個人的に(園で使用している音響機材はほとんど個人機材です・・・)少しずつ環境を整えなが整備してきました。昨年音あそびを始められたことで、「音楽好き幼稚園」としての第1歩を記せたように思います。「音楽に特化した」でも「音楽保育」でもなく、「音楽好き」かな。当園はあそびがメインですから。

 まだまだ試行錯誤の状態ですが、一般的に学校教育などで触れるであろう、スズ・トライアングル・タンバリンといった楽器のほかに、実際に耳にする音楽を形作っている、ドラム・ベース・ギター・シンセサイザー・パーカッションなどといった楽器にも触れる機会を作り、また、それらの楽器を使ってのプロの演奏にもふれることで、「カッコイイ」「やってみたい」という興味が生まれたらいいなと思います。音あそびはまだまだ始まったばかり。これからさらに充実していけるよう、努めて行きます。

 

f:id:koumyougenki:20210506172930j:plain

早く安心して生活ができるようになってほしいですね・・・。